株式会社ランドビジネスのM&A実績
不動産会社が服飾事業に参入し、縫製工場から百貨店ブランド、宝飾、欧州ブランドの輸入までを次々に買い集めています。2021年に紳士服のオーダー事業を譲り受けたのを皮切りに、2023年だけで4社を取得しました。売り手はほぼ全件が創業者や親族など個人の株主です。営業赤字や債務超過の会社も買っているのが特徴で、製造から販売までをグループ内でそろえることを目的にしています。
株式会社ランドビジネスが公表した適時開示7件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都千代田区
- 設立
- 1985年2月
- 事業内容
- オフィスビル・レジデンスの賃貸と不動産投資を本業に、外食事業と服飾事業(婦人服・紳士服の企画・製造・販売)を新しい柱として育てている会社
- 売上高
- 186億300万円(2025年9月期(連結))
- 営業利益
- 6億3,500万円
- 純資産
- 160億7,100万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 婦人服・紳士服の縫製/婦人服の企画・販売(百貨店ブランド)/宝石の製造・卸/欧州ブランド衣料の輸入卸・小売/菓子の製造販売・飲食店
- 対象の規模
- 対象の売上 0.55億円〜69.9億円(縫製工場・宝飾会社の2件は業績非開示)
- 手法
- 株式譲渡(100%子会社化)が中心。事業譲受も使う。親会社ごと買って、その子会社も孫会社として引き取る形もある
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残す形です。2025年9月期の決算短信でもフランドルが子会社として名指しされています。製造子会社(縫製)と販売子会社(フランドル)を組み合わせ、グループ内で企画・製造・販売を一貫させる狙いを示しています。
- 取得価額は全件で非開示です。理由はいずれも「相手先との守秘義務」。ただし毎回「直前事業年度末純資産の15%未満の額」と書かれており、2025年9月期末の連結純資産160億7,100万円の15%=約24億円を下回ると読めます
- 債務超過の会社を丸ごと買っています。フランドルは純資産マイナス15億2,800万円、アップルアンドローゼスは同マイナス1億1,900万円でした。会社分割で事業だけを切り出すのではなく、株式をそのまま取得しています
- 服飾事業は買い手自身にとってもまだ赤字です。2025年9月期の服飾事業は売上71億6,900万円に対しセグメント損失9億1,700万円で、決算短信では「先行投資段階」と説明しています
- 2025年9月期には寿月興産有限会社と村田商事株式会社も子会社化しています(決算短信の連結範囲の注記による。取得の開示は手元になく、この一覧には入れていません)
買収の履歴7件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社アップルアンドローゼス
贈答菓子の製造販売(「apple & roses」ブランド)、飲食店運営/長野県安曇野市/2017年7月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 5,500万円
- 対象の営業利益
- △3,100万円
- 対象の純資産
- △1億1,900万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:個人1名(呉羽 英樹)が100%保有/相手先との守秘義務により非開示。「直前事業年度末純資産の15%未満の額」。2025年9月期末の連結純資産16,071百万円の15%=約2,411百万円を下回る
買収理由:贈答菓子のブランド編集力・梱包デザインと広告広報の人材を取り込み、保有する大型不動産でフラッグシップ型カフェを展開する
売上5,457万円・営業損失3,065万円・純資産マイナス1億1,879万円。売上は9,322万円→1億62万円→5,457万円と直近で半減し、債務超過も3期続けて広がっていました。それでも買い手が評価したのはブランドの世界観、パッケージのデザイン、広報の人材といった無形の資産です。買収前から業務委託契約を結んでいた取引先で、仕事を通じて互いを知っていた相手が買い手になった例です。
2026年2月24日に株式譲渡実行予定として開示され、その後の商号変更や合併の開示はありません。
有限会社エフイーエヌ(子会社の株式会社しほみ、株式会社デュベティカジャパンを含む)
欧州ブランド衣料・靴の輸入卸(Duvetica等の対日独占販売)、直営店での小売/東京都港区/1998年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9億100万円
- 対象の営業利益
- 1,300万円
- 対象の純資産
- 9億100万円
決算期:2025年3月期(エフイーエヌ単体)/譲渡前の株主:正村仁50%、住吉麻子35.7%、西村弘二14.3%(個人3名)/相手先との守秘義務により非開示。3社の取得価額の合算額が「直前事業年度末純資産の15%未満の額」。2025年9月期末の連結純資産16,071百万円の15%=約2,411百万円を下回る/有限会社エフイーエヌ単体の数値。子会社しほみは売上336百万円・営業損失11百万円・純資産147百万円、デュベティカジャパンは売上17百万円・営業損失65百万円・純資産△518百万円(いずれも2025年6月期)
買収理由:欧州ブランドの対日独占販売権と輸入・生産・販売の一貫した事業基盤を取り込み、アパレル事業の競争力を高める
エフイーエヌ単体で売上9億69万円・営業利益1,327万円・純資産9億82万円、従業員は3名です。営業利益は△880万円→△1,358万円→1,327万円と直前期に黒字へ戻したところでした。一方で商標管理の子会社は純資産マイナス5億1,796万円、小売の子会社も3期連続の営業赤字で、グループの中に重い部分を抱えた状態のまま3社まとめて売れています。独占販売権のように他社がすぐに代わりを用意できない権利は、赤字の子会社ごと引き取ってもらう理由になります。
訂正開示により株式取得実行日は2026年1月9日(予定)。その後の商号変更や合併の開示はありません。
株式会社フランドル
婦人服の企画・製造・販売(「INED」「I.T.'S.international」など、百貨店中心に90店舗)/東京都目黒区/1980年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 69億8,600万円
- 対象の営業利益
- 5,500万円
- 対象の純資産
- △15億2,800万円
決算期:2023年2月期/譲渡前の株主:栗田英俊73.5%、原田敏26.5%(個人2名)/相手先との守秘義務により非開示。「直前事業年度末純資産の15%未満の額」
買収理由:90店舗の販売網を得て、縫製子会社(ジェンツ、サンク)と合わせ製造から販売まで一貫させ、婦人プレタポルテ市場に参入する
この一覧で最大の案件です。売上69億8,611万円、従業員386名。ただし純資産はマイナス15億2,838万円の債務超過で、営業損益は△11億7,859万円→△7億5,374万円→5,469万円と、コロナ期の大赤字からようやく黒字に戻した直後でした。百貨店に90店舗という販売網とブランドが、債務超過を上回る価値として評価されています。大きな赤字を出した会社でも、黒字に戻した年が1期あれば買い手は動きます。決議・契約・実行がすべて同じ日だった点も特徴です。
2025年9月期の決算短信で「子会社フランドル社が高品質婦人服の企画、販売を行っており」と記載されており、子会社として残っています。
株式会社サンク
婦人服の縫製(多品種少量生産)/福島県福島市/1985年11月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 9,000万円
- 対象の営業利益
- △1,000万円
- 対象の純資産
- 4,100万円
決算期:2022年11月期/譲渡前の株主:個人1名(吾妻 孝志)が100%保有/相手先との守秘義務により非開示。「直前事業年度末純資産の15%未満の額」
買収理由:紳士服に加えて婦人服の縫製工程をグループ内に持ち、銀座の服飾専門店で扱う高級婦人服を供給する
売上9,011万円・営業損失1,037万円・純資産4,075万円、従業員23名の縫製工場です。売上は1億1,988万円→1億458万円→9,011万円と3期続けて減り、営業損益も890万円の黒字から赤字に落ちていました。売上1億円を切り、赤字に転じた町の縫製工場でも、上場企業に100%で買われています。評価されたのは「多品種少量生産」という得意分野でした。
2023年12月1日に株式取得実行予定として開示。2025年9月期の決算短信には「製造子会社」とあるのみで社名の記載がなく、手元の開示では存続を確認できません。
甲府貴宝株式会社
宝石の製造・卸(デザイン企画から製品仕上げまで)/山梨県甲府市/1981年1月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:斉藤則男84%、斉藤恭子15%、青木幸利1%(個人3名)/相手先との守秘義務により非開示。「直前事業年度末純資産の15%未満の額」
買収理由:紳士服の周辺事業へ広げ「装う楽しみ」を加速する。銀座に自社製品を売る宝石店を出す予定
宝飾の街・山梨で59年の業歴、従業員20名。業績は開示されていません。買い手にとって宝石は新規事業で、本業と離れた業種の会社でも「服と合わせて売れる」という筋が立てば買い手になる例です。株主は親族2名と会長の3名で、全員からまとめて取得しています。
2023年7月3日に株式取得実行予定として開示。その後の開示に社名が出てこず、手元の開示では存続を確認できません。
株式会社ジェンツ
紳士服の縫製(三つ星認定工場)/福島県福島市/2016年9月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:個人1名(長沢 晴夫)が100%保有/相手先との守秘義務により非開示。「直前事業年度末純資産の15%未満の額」
買収理由:高い縫製技術と三つ星認定工場を取り込み、紳士服を縫製から販売まで一貫して手がける
従業員151名の縫製工場で、業績は開示されていません。評価されたのは「三つ星認定工場」という外部からのお墨付きと縫製技術でした。この取得のあと、同じ福島市のサンク、販売網を持つフランドルと続けて買っており、ここが買い手の服飾グループ作りの起点になっています。
2023年7月3日に株式取得実行予定として開示され、2023年12月のフランドル取得の開示でもグループ化済みとして言及されています。それ以降の開示には社名がなく、現在の存続は確認できません。
メーカーズシャツ鎌倉株式会社の紳士重衣料・トラウザーズのカスタムオーダー事業
紳士重衣料(コート、スーツ、ジャケット)とトラウザーズのカスタムオーダー(ハンドメイドライン)/神奈川県鎌倉市/譲渡会社は1995年6月設立設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:メーカーズシャツ鎌倉株式会社(事業会社)/非開示。業績への影響は軽微と開示
買収理由:ハンドメイドラインの生地・パターン・縫製技術を継承し、新事業として紳士服に参入する
会社ではなく事業の一部門だけを譲り受けた案件で、業績も金額も開示されていません。売り手はシャツの専門店で、本業のシャツは手元に残し、オーダースーツなどのハンドメイドラインだけを切り出しています。会社全体を売らなくても、一部門だけを引き取ってもらう道がある例です。買い手はこれを足がかりに、2年後から縫製工場の買収を始めています。
事業は当社本体が直接譲り受けたため法人は残りません。2023年のジェンツ・甲府貴宝取得の開示で紳士服事業参入の起点として言及されていますが、その後の事業の状況は手元の開示では確認できません。
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