ポエック株式会社のM&A実績
技術を持つ地方の製造・メンテナンス会社を、2019年から6社買っている会社です。対象はいずれも売上2億〜6億円台の規模で、売り手は全件が個人株主です。香川、神奈川、福岡、兵庫、和歌山と、本社のある福山から離れた地域の会社も買っています。
ポエック株式会社が公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 広島県福山市
- 設立
- ―
- 事業内容
- ポンプなど水処理機器の専門商社を母体に、熱交換器・養殖設備(環境・エネルギー)、船舶用機械・プラント機器(動力・重機等)、消火設備(防災・安全)の製造会社を束ねるグループ
- 売上高
- 101億1,400万円(2025年8月期(連結))
- 営業利益
- 9億1,100万円
- 純資産
- 42億5,500万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 産業機械・省力化設備の製作/モーター・ポンプの修理・メンテナンス/水産養殖設備・熱交換器/有機溶剤の再生装置/スプリンクラーヘッドの製造/受変電設備の調整試験・保守
- 対象の規模
- 対象の売上 1.98億円〜6.18億円
- 手法
- 株式譲渡で100%を取得する形のみ。基本合意書を結んでから1〜2か月後に株式譲渡契約と実行、という段取りを踏むことが多い
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残すのが基本で、2025年8月期の決算短信でもマリンリバー、コーベックス、アイエススプリンクラーが社名入りで説明されています。マリンリバーでは社長が続投すると開示されていました。一方、最初に買ったミモトは、2021年の開示の子会社一覧から名前が消えています。
- 6件中3件で取得価額が開示されています。協立電機工業2億5,000万円、アイエススプリンクラー7億6,000万円、マルコ電機技術5億5,370万円です
- 非開示の理由は毎回「売主が個人であるため」です。売り手が個人だと金額を伏せる、という方針がはっきりしています。開示された3件のうち協立電機工業は売主の氏名も出ていました
- 取得価額の欄には毎回「財務・税務・法務・労務デューデリジェンスを実施した上で」と書かれています。小さな会社でも、税務と労務まで調べられると考えておくべき買い手です
- ミモトとマリンリバーは、買う前からグループ会社と取引のあった相手でした。外注先・仕入先から買収に進む流れがあります
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
マルコ電機技術株式会社
受変電設備の現地調整試験・改造、リレー試験・部品交換等のメンテナンス/兵庫県たつの市/1995年8月設立
- 取得価額
- 5億5,370万円
- 対象の売上
- 2億1,084万円
- 対象の営業利益
- 4,006万円
- 対象の純資産
- 3億15万円
決算期:2025年7月期/譲渡前の株主:個人株主複数名で100%(氏名は非公開)/アドバイザリー費用等(概算)34百万円を加えた合計は587.7百万円。営業利益(2025年7月期)の約13.8倍、純資産の約1.8倍
買収理由:受変電設備の保守という電力インフラ領域を取り込み、上場グループの採用力で技術者を増やして受注を広げる
従業員7名、売上2億1,100万円・営業利益4,000万円(利益率19%)・純資産3億円。7人の会社に5億5,370万円、営業利益の約14倍がついています。開示には「人的リソースの制約により、一部案件について受注を見送らざるを得ない状況」とあり、仕事はあるのに人が足りない会社が、上場企業の採用力を目当てに売った形です。売上は3期ほぼ横ばいでしたが、高単価の調整試験・改造に特化していた点が評価されました。
予定の7月31日より早く、2026年7月21日に取得が完了しました。その後の商号変更や合併の開示はありません。
アイエススプリンクラー株式会社
スプリンクラーヘッド、流水検知装置、一斉開放弁の製造/和歌山県橋本市/1991年8月設立
- 取得価額
- 7億6,000万円
- 対象の売上
- 6億1,775万円
- 対象の営業利益
- 1億2,007万円
- 対象の純資産
- 3億959万円
決算期:2024年4月期/譲渡前の株主:個人株主が100%(氏名は非公開)/営業利益(2024年4月期)の約6.3倍、純資産の約2.5倍
買収理由:スプリンクラー消火装置を持つ防災事業と製品を組み合わせ、販路と技術を共有する
売上は1億7,900万円→4億4,800万円→6億1,800万円と2年で3倍以上、営業利益は1,800万円の赤字から1億2,000万円の黒字に転じた直後の譲渡です。伸び盛りの会社でも、資金と人員を補うために売るという選択がされています。開示には、社長は経営に携わり続け、足りない資金と人材をグループが補う形が書かれています。テレビ番組で紹介されて注目が集まった年の売却でした。
コーベックス株式会社
溶剤再生装置・洗浄装置・脱臭装置の製造販売、メンテナンス/兵庫県神戸市/1970年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 3億7,266万円
- 対象の営業利益
- 5,612万円
- 対象の純資産
- 1億6,665万円
決算期:2023年3月期/譲渡前の株主:個人株主2名(76.4%、23.6%。氏名は非公開)/非開示(売主が個人であるため)。財務・税務・法務・労務デューデリジェンスを踏まえた評価額を基に協議して決定
買収理由:有機溶剤のリサイクル装置という環境分野の製品を取り込む
創業55年、売上3億7,300万円・営業利益5,600万円・純資産1億6,700万円。営業利益は120万円→2,800万円→5,600万円と、ほぼトントンの状態から2年で大きく伸ばした局面での譲渡です。特許を持つ装置と4,000台以上の納入実績が評価されました。2025年8月期の決算短信では、同社の売上が二桁成長したと書かれています。
株式会社マリンリバー
水産養殖設備の設計・施工、冷却加温装置・熱交換器の設計製作/福岡県糟屋郡篠栗町/1987年10月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 1億9,836万円
- 対象の営業利益
- 3,924万円
- 対象の純資産
- 1億9,913万円
決算期:2020年9月期/譲渡前の株主:個人株主4名(77.5%、11.5%、9.0%、2.0%。氏名は非公開)/非開示(売主が個人であるため)。財務・税務・法務・労務デューデリジェンスを踏まえた評価額を考慮して合意
買収理由:養殖設備のニッチトップを取り込み、ポンプ・ブロワの併売と製造面の連携を図る
売上1億9,800万円・営業利益3,900万円(利益率20%)・純資産2億円。買う前からポエックと商品の売買をしていた取引先です。開示には「代表取締役社長は株式取得後も社長を継続する予定」と明記され、社長の経営能力・営業能力を評価したと書かれています。株は手放しても社長は経営に残る、という承継の形です。
協立電機工業株式会社
電気機械機器の製作・修理(モーターコイル、ポンプ等のメンテナンス)、機械器具設置工事/神奈川県茅ヶ崎市/1952年1月設立
- 取得価額
- 2億5,000万円
- 対象の売上
- 2億6,176万円
- 対象の営業利益
- 6,909万円
- 対象の純資産
- 2億1,316万円
決算期:2018年12月期/譲渡前の株主:個人1名(岩橋 由紀江)が100%保有/アドバイザリー費用等(概算)20.75百万円を加えた合計は270.75百万円。営業利益(2018年12月期)の約3.6倍、純資産の約1.2倍
買収理由:モーター・ポンプ修理の技術を取り込み、関東での機器メンテナンス受注を広げる
創業83年、売上2億6,200万円・営業利益6,900万円(利益率26%)・純資産2億1,300万円。利益率26%の会社が、営業利益の3.6倍・純資産とほぼ同額の2億5,000万円で売られています。この会社の3件の価格開示のなかで、倍率はいちばん低い水準です。売り手は創業者の娘で、100%を1人で持っていました。取得完了時には代表者がグループ側の2名に替わっています。
2024年7月の開示で、連結子会社6社のひとつとして社名が挙がっています。2025年8月期の決算短信には社名の言及がなく、確認できているのは2024年7月時点までです。
株式会社ミモト
一般産業機械・省力化設備の設計・製作・据付/香川県坂出市/1980年3月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- 2億3,030万円
- 対象の営業利益
- 81万円
- 対象の純資産
- 9,276万円
決算期:2018年2月期/譲渡前の株主:味元 克枝65%、味元 勝弘20%、味元 昭憲15%(親族3名)/非開示(売主が個人であるため)。財務・法務デューデリジェンスを踏まえた評価額を考慮して合意
買収理由:子会社三和テスコの外注先を取り込み、製造工程の内製化と稼働の平準化を図る
売上2億3,000万円・純資産9,300万円。営業利益は3,690万円→750万円の赤字→81万円と、利益がほぼ出ていない時期の譲渡でした。もともと三和テスコから製造を請け負っていた外注先で、買い手にとっては外注費を内製化できる相手です。利益が出ていなくても、取引先にとって欠かせない工場なら買い手はいます。社長は取得後も続投する予定と開示されていました。
2019年10月の開示では連結子会社として社名が挙がっていますが、2021年8月の開示の連結子会社一覧(三和テスコ、東洋精機産業、協立電機工業)には名前がありません。合併等の開示は手元に無く、その後は追えていません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- マルコ電機技術株式会社5億5,370万円(売上の2.63倍・営業利益の13.8倍)
- アイエススプリンクラー株式会社7億6,000万円(売上の1.23倍・営業利益の6.3倍)
- 協立電機工業株式会社2億5,000万円(売上の0.96倍・営業利益の3.6倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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