株式会社アピリッツのM&A実績
「当社と同領域の事業を営む企業のM&A」を中期の成長戦略に掲げ、Web制作・システム開発・IT人材派遣の小さな会社を、社長個人から買い続けている会社です。対象は売上1億6,000万円〜8億4,000万円の会社が中心。国内の6件すべてで取得価額を開示しているので、この規模の受託開発会社がいくらで売れるかの物差しになります。
株式会社アピリッツが公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月9日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都渋谷区
- 設立
- 2000年7月
- 事業内容
- ECサイト・Webシステムの受託開発、IT人材の育成・派遣、オンラインゲームとファンクラブサービスの運営
- 売上高
- 99億5,500万円(2026年1月期(連結))
- 営業利益
- △3億900万円
- 純資産
- 18億6,000万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- Webシステム・スマホアプリの受託開発/ECサイト構築(Shopify)/IT人材派遣・SES・エンジニア教育/AWSを使ったクラウド構築/Webサイト・動画制作
- 対象の規模
- 対象の売上 1.6億円〜8.4億円
- 手法
- 株式譲渡による100%取得が基本。子会社のY'sが買い手になる「孫会社化」、業績に応じて後から払うアーンアウトも使う
- 赤字でも買うか
- 買っている(実績あり)
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残し、譲渡後も元の代表が経営を続ける形が基本です。ただし最初に買ったムービングクルーは、取得から約3年半後の2025年6月にアピリッツ本体へ吸収合併されています。買われたY'sが、その後JUTJOYを買う側に回った例もあります。
- 取得価額は国内の6件すべてで開示されています。最小はJUTJOYの2,500万円、最大はY'sの3億5,000万円です
- アドバイザリー費用等も毎回開示されています。金額は1,580万円〜3,000万円で、案件の大小とあまり連動していません。クエイル(株式6,200万円)では費用が2,780万円と、株式の値段の約45%に当たります
- 赤字や債務超過の会社も買っています。フルバランスは2期連続の営業赤字で前々期は債務超過、クエイルも2期連続の営業赤字から黒字に戻した直後の譲渡でした
- 2021年には合同会社ムーンラビット(オンラインゲーム配信)の持分取得を発表しましたが、条件が折り合わず中止しています。2025年にはベトナムのBunbu社も買っていますが、海外案件のためここでは扱いません
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社フルバランス
Shopifyを使ったECサイトの構築受託・運用保守、D2C支援/東京都新宿区/2004年1月設立
- 取得価額
- 1億2,500万円
- 対象の売上
- 2億6,986万円
- 対象の営業利益
- 1,797万円
- 対象の純資産
- 990万円
決算期:2025年3月期/譲渡前の株主:角間 実(取締役会長)40%、原田 真緒(代表取締役)30%、中西 健輔30%(個人3名)/株式の取得価額125百万円。アドバイザリー費用等(概算)30百万円を加えた合計は155百万円
買収理由:Shopify上位パートナーとしてのEC支援力と、推し活グッズなどエンタメ領域の顧客基盤の取り込み
売上2億6,986万円・営業利益1,797万円・純資産990万円。2023年3月期・2024年3月期と2期続けて営業赤字で、2024年3月期は純資産マイナス1,053万円の債務超過でした。黒字に戻った最初の期の実績で、純資産の約12.6倍、営業利益の約7倍の1億2,500万円がついています。売上は9,256万円→1億9,805万円→2億6,986万円と伸びており、「Shopify Partner of the Year」の受賞や大手企業との取引実績が評価されています。決算書が傷んでいても、伸びている事業と取引先があれば値段はつきます。
株式会社JUTJOY
SES、エンジニア教育、受託開発/東京都渋谷区/2020年9月設立
- 取得価額
- 2,500万円
- 対象の売上
- 2億2,396万円
- 対象の営業利益
- △48万円
- 対象の純資産
- 1,473万円
決算期:2024年8月期/譲渡前の株主:原島 悟(代表取締役)50%、葉倉 歩50%(個人2名)/株式の取得価額25百万円。アドバイザリー費用等(概算)15.8百万円を加えた合計は40.8百万円。ほかに2025年8月期〜2027年8月期の業績達成度合いに応じて、アーンアウト対価で最大15百万円を支払う
買収理由:未経験者をエンジニアに育てる教育カリキュラム(Java・PHP)の取り込み
売上2億2,396万円・営業損失48万円・純資産1,473万円。この会社の案件で最小の2,500万円です。設立4年半の会社で、営業利益は263万円→損失131万円→損失48万円と2期続けて小幅な赤字でした。値段の一部を「あとで業績次第で払う」アーンアウト(最大1,500万円)にしているのがこの案件の特徴で、満額なら株式の対価は4,000万円になります。今の利益が薄くても、将来の上振れ分を条件付きで受け取る形にすれば、売り手の取り分を増やす余地があります。
株式会社クエイル
スマホアプリ・Webアプリ開発、AWSを使ったクラウド構築・運用、Webサイト制作/鹿児島県鹿児島市/2013年11月設立
- 取得価額
- 6,200万円
- 対象の売上
- 1億5,780万円
- 対象の営業利益
- 215万円
- 対象の純資産
- 3,308万円
決算期:2023年9月期/譲渡前の株主:池田 武尚(代表取締役)58.3%、KFG地域企業応援投資事業有限責任組合24.2%、石橋 睦之13.6%、株式会社鹿児島銀行3.8%/株式の取得価額62百万円。アドバイザリー費用等(概算)27.8百万円を加えた合計は89.8百万円
買収理由:地方でのデジタル人材の採用力強化と、AWSを使った開発力の取り込み
売上1億5,780万円・営業利益215万円・純資産3,308万円。営業利益は損失1,601万円→損失277万円→215万円と、2期の赤字から黒字に戻した直後の譲渡です。値段は6,200万円で、純資産の約1.9倍。鹿児島の会社を東京の上場企業が買っている例で、買い手は「新たな地域での採用力強化」を理由に挙げています。株主には地元の銀行と地域ファンドが入っており、銀行や地域ファンドが出資している会社でも、まとめて100%譲渡できています。
Bee2B株式会社
Webサービス・システムの開発・構築、運用保守、コンサルティング/東京都港区/2018年2月設立
- 取得価額
- 1億5,000万円
- 対象の売上
- 2億2,595万円
- 対象の営業利益
- 1,160万円
- 対象の純資産
- 4,519万円
決算期:2024年1月期/譲渡前の株主:間山 譲(代表取締役)が100%保有/株式の取得価額150百万円。アドバイザリー費用等(概算)27百万円を加えた合計は177百万円
買収理由:受託開発の顧客と人員の拡充、外国人採用とベトナムでの人材活用のノウハウ
売上2億2,595万円・営業利益1,160万円・純資産4,519万円。設立6年の会社に、営業利益の約13倍、純資産の約3.3倍の1億5,000万円がついています。売上は1億1,678万円→1億6,174万円→2億2,595万円と2年で倍近くに伸びていました。利益の額は小さくても、売上が伸びている局面なら倍率は高めに出ます。外国人エンジニアの採用・活用のノウハウも買収理由に挙げられています。
株式会社Y's
IT人材派遣、Webサイト・動画制作/東京都新宿区/2011年4月設立
- 取得価額
- 3億5,000万円
- 対象の売上
- 8億3,514万円
- 対象の営業利益
- 3,208万円
- 対象の純資産
- 1億657万円
決算期:2022年3月期/譲渡前の株主:米田 龍平(代表取締役)45%、中館 博貴(取締役CEO)45%、栗田 静華(取締役CFO)10%(経営陣3名)/株式の取得価額350百万円。アドバイザリー費用等(概算)25.9百万円を加えた合計は375.9百万円
買収理由:IT人材派遣の拡大と、人材育成・教育のノウハウの取り込み
売上8億3,514万円・営業利益3,208万円・純資産1億657万円。この会社の案件で最大の3億5,000万円で、営業利益の約11倍、純資産の約3.3倍です。営業利益は2,317万円→283万円→3,208万円と、前の期に大きく落ちてから戻した期の実績での譲渡でした。株主は経営陣3名だけ。買われたY'sはその後、2025年にJUTJOYを買う側に回っています。
アピリッツの会社情報ページのグループ会社欄に社名のまま載っています。2025年のJUTJOY取得の開示では、代表取締役が村上一歩氏となっています。
株式会社ムービングクルー
Webシステム開発、スマホアプリ開発(ファンコミュニティサイトの企画・開発・運営)/東京都千代田区/2006年10月設立
- 取得価額
- 1億1,000万円
- 対象の売上
- 3億7万円
- 対象の営業利益
- 40万円
- 対象の純資産
- 1,292万円
決算期:2021年9月期/譲渡前の株主:五島 正道(代表取締役)が100%保有/株式の取得価額110百万円。アドバイザリー費用25百万円を加えた合計は135百万円
買収理由:エンタメ領域の顧客向け開発ノウハウとデジタル人材の取り込み
売上約3億円・営業利益40万円・純資産1,292万円。利益はほぼゼロ、純資産も1,300万円弱の会社に1億1,000万円がついています(純資産の約8.5倍)。前の期の営業利益も747万円でした。資本金515万円、社長1人が100%を持つ会社です。利益が出ていなくても、エンジニアと顧客基盤そのものに値段がついた例です。この会社がアピリッツの最初の買収で、以後同じ型の買収が続いています。
2025年3月17日の開示で、2025年6月1日を効力発生日としてアピリッツ本体に吸収合併する計画が公表されました。合併直前の2025年1月期は売上4億500万円・営業利益1,200万円・純資産5,200万円で、取得時より伸びていました。現在のグループ会社一覧に社名はありません。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された6件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 株式会社フルバランス1億2,500万円(売上の0.46倍・営業利益の7.0倍)
- 株式会社JUTJOY2,500万円(売上の0.11倍)※営業赤字での譲渡
- 株式会社クエイル6,200万円(売上の0.39倍・営業利益の28.9倍)
- Bee2B株式会社1億5,000万円(売上の0.66倍・営業利益の12.9倍)
- 株式会社Y's3億5,000万円(売上の0.42倍・営業利益の10.9倍)
- 株式会社ムービングクルー1億1,000万円(売上の0.37倍・営業利益の274.3倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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