株式会社ヤマタネのM&A実績
コメ卸と倉庫業の老舗が、中期経営計画「ヤマタネ2028プラン」で掲げる「バリューチェーンの拡大」に沿って、食品と物流の周辺の会社を年に1〜2件のペースで買っています。相手は投資ファンドが持つ年商170億円の食品卸から、事業会社が切り出したアーカイブ事業、九州のコメのネット通販会社、技術を持つ小さな機器メーカーまで幅があります。
株式会社ヤマタネが公表した適時開示6件をもとに整理しています。データ時点:2026年10月12日(新しい開示が出たら追加します)
会社概要
- 本社
- 東京都江東区
- 設立
- 1924年(創業)
- 事業内容
- 倉庫を中心とする物流、コメの卸売と加工食品の卸売、システム開発、不動産の4事業。2025年4月からカンパニー制
- 売上高
- 886億7,400万円(2026年3月期(連結))
- 営業利益
- 58億6,400万円
- 純資産
- 635億3,300万円
どんな会社を買っているか
- 買う業種
- 業務用冷凍食品・加工食品の卸売/コメの卸売・EC販売/冷凍冷蔵の運送・倉庫/文書保管・文書電子化(アーカイブ事業)/食品加工装置・発酵食品の開発製造
- 対象の規模
- 取得額 8億円〜72.7億円(金額が開示された3件)。小さな会社は過半数だけを取得し、金額は出していない
- 手法
- 株式譲渡による子会社化が中心。小規模な会社は51〜55%だけを取得し、創業者に残りを持ってもらう形も使う。事業会社からは、相手が新会社に事業を分割したうえでその株式を買う形
- 赤字でも買うか
- 黒字の会社のみ
- 買収後の扱い
- 買った会社は社名のまま子会社として残しています。2026年3月期の決算短信では、シンヨウ・ロジ、ショクカイ、農産ベストパートナー、しん力などが連結子会社として、T.M.Lが非連結子会社として名前を挙げられています。
- 金額は案件の大きさで出し方が変わります。ショクカイは取得時の開示で概算を出し、価格調整の後に確定額をもう一度開示しました。アーカイブ事業と農産ベストパートナーは、決算短信の企業結合の注記で取得原価が分かります
- 小さな会社の取得では金額も業績も出していません。T.M.Lやオリゼの開示は「連結業績への影響は軽微」とだけ書かれています
- 51%や55%だけ買い、創業者が残りを持ち続ける形があります。T.M.Lでは社長が49%を保有したままです
買収の履歴6件
すべて同社が公表した適時開示から転記しています。「―」は開示が無いか、 まだ取り込めていない項目です。
株式会社オリゼ
米麹由来の発酵甘味料「オリゼ」の開発・製造、それを使ったグラノーラや米麹調味料の製造・販売/東京都渋谷区/2018年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:非開示(代表取締役は小泉 泰英)/非開示。「当社グループ連結業績に与える影響は軽微」とのみ記載
買収理由:精米・卸にとどまらず加工・販売機能を強化する。ヤマタネの販路と玄米などの調達網を組み合わせる
資本金5,000万円、設立2018年の若い会社です。取得したのは55%で、残りの持ち主は開示されていません。買い手は「原料(玄米)の調達を効率化できる」とシナジーを具体的に書いています。仕入れ先や原料で買い手と重なる会社は、その重なり自体が売り込みの材料になります。
株式譲渡の実行日は2026年8月3日(予定)と開示されています。実行の完了や、その後の商号変更・合併を確認できる開示は手元にありません。
株式会社T.M.L
飽和水蒸気で食材を加熱処理する下ごしらえ調理器「ソフトスチーマー」の開発・製造・販売、技術供与/東京都新宿区/2003年5月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:代表取締役社長の山川 裕夫が取得後も49%を保有(取得前の株主構成は非開示)/非開示。「2026年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微」とのみ記載
買収理由:規格外・余剰の農作物を加熱・冷凍して日持ちさせ、産地のフードロスを減らす。子会社ショクカイと新商品を共同開発する
資本金7,300万円、設立2003年。調理器と加熱方法の特許を持っています。買われたのは51%だけで、社長は49%を持ったまま経営を続けています。全部を売らずに大株主として残り、上場企業の販路を使う形です。2026年3月期の決算短信では「業績への影響が軽微」として連結の範囲から外れており、規模の小さな会社でも技術があれば買い手が付く例です。
有限会社農産ベストパートナー・株式会社しん力
熊本県を中心とした九州産米の卸・販売(年間約4,000トン)、ECブランド「こめたつ」の運営、野菜・果物・畜産物の卸売
- 取得価額
- 8億円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:非開示/決算短信の企業結合注記による取得原価(現金)。別にアドバイザリー費用等43百万円。のれんは412百万円(10年償却)。取得時に受け入れた資産1,733百万円・負債1,346百万円
買収理由:楽天市場で実績のあるEC運営のノウハウを取り込み、グループのEC事業を強化する。両社を拠点に西日本へ広げる
取得額8億円のうち4億1,200万円がのれんで、受け入れた資産から負債を引いた額(約3億8,700万円)の2倍強で買われた計算です。楽天市場の「米部門大賞」を通算7回受賞したECブランドが評価されました。決算短信の概算では、2025年1〜7月の7か月だけで営業収益26億2,200万円・営業利益2億8,200万円の規模です。ネットでの売る力は、地方のコメ卸でも値段の付く資産になります。個別の取得開示は出ておらず、決算短信で初めて金額が分かった案件です。
2025年8月1日に取得。有限会社から株式会社に移行し、2026年3月期の決算短信で㈱農産ベストパートナー・㈱しん力ともに連結子会社として載っています。
株式会社ヤマタネドキュメントマネジメント(阪急阪神エステート・サービスのアーカイブ事業)・株式会社キョクトウ
文書保管・文書電子化・機密文書廃棄(アーカイブ事業)、文書管理コンサルティング/新設会社(分割元は阪急阪神エステート・サービス)設立
- 取得価額
- 16億8,800万円
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:阪急阪神エステート・サービス株式会社(事業会社)が100%保有/決算短信の企業結合注記による取得原価(現金)。別にアドバイザリー費用等37百万円。のれんは106百万円(10年償却)。取得時に受け入れた資産1,725百万円・負債143百万円
買収理由:関東と関西でより大規模なアーカイブ事業を展開する。人材と設備を活用する
取得額16億8,800万円に対し、のれんは1億600万円だけです。受け入れた資産の大半は固定資産(14億100万円)で、設備と人材にほぼ帳簿どおりの値段が付いた案件と読めます。売り手は事業会社で、事業だけを新会社に移してから株式を渡す形を取っています。会社全体ではなく一部の事業を売りたいときの進め方の実例です。
2025年7月1日に取得。事業は売り手が新設した「株式会社ヤマタネドキュメントマネジメント」に移っており、キョクトウはその100%子会社として残っています。2026年3月期の決算短信で両社とも連結子会社として載っています。
株式会社ショクカイ
冷凍食品を中心とした弁当給食向け業務用食品の卸売(業界トップシェア)、デリカ事業/東京都台東区/2018年1月設立
- 取得価額
- 72億7,100万円
- 対象の売上
- 174億1,200万円
- 対象の営業利益
- 7億6,000万円
- 対象の純資産
- 38億6,700万円
決算期:2022年12月期/譲渡前の株主:アイ・シグマ事業支援ファンド2号投資事業有限責任組合(投資ファンド)が99.9%保有/価格調整後の確定額(2023年11月14日開示)。取得時の開示では概算6,850百万円で、調整により421百万円増えた。アドバイザリー費用等95百万円を加えた合計は7,367百万円
買収理由:弁当給食向けの全国販売網を取り込み、加工食品の提供や食品ロス対応を進める
売上174億1,200万円・営業利益7億6,000万円・純資産38億6,700万円。取得額は営業利益の約9.6倍、純資産の約1.9倍です。営業利益は5億100万円→5億1,300万円→7億6,000万円と伸びている局面でした。売り手は投資ファンドです。最初の開示は概算で、価格調整を経て4億2,100万円上乗せされた額で確定しています。契約後に決算の数字で価格を合わせる条項が実際に動いた例です。
2023年10月2日に子会社化が完了。2026年3月期の決算短信で連結子会社として載り、売上197億4,500万円・営業利益9億4,600万円と事業ごとの数字も示されています。
株式会社シンヨウ・ロジ
生鮮・食品の一般貨物運送、冷凍冷蔵倉庫、食品量販店の物流センター運営/千葉県千葉市/1972年6月設立
- 取得価額
- ―
- 対象の売上
- ―
- 対象の営業利益
- ―
- 対象の純資産
- ―
決算期:非開示/譲渡前の株主:非公開(買い手と資本・人的・取引関係なし)/非公開。第三者機関の財務・法務・ビジネスの調査報告書をもとに相手先と協議して決定。適時開示基準に該当しない任意開示
買収理由:冷凍冷蔵の保管・配送のノウハウを取り込み、物流事業と食品事業の両方とシナジーを出す
資本金2,000万円、創業50年の運送会社です。買い手は常温の倉庫が中心で、自分たちに無い冷凍冷蔵の配送を持っていたことが理由でした。売り手の名前も金額も伏せたまま、任意で開示しています。決算短信では、この会社ののれんは5年で償却すると書かれており、ショクカイ(15年)と比べると短い期間で回収する見立ての買い物だったことが分かります。
この会社に売るといくらか
取得価額が開示された3件の実績です。公表されている数字をそのまま並べたもので、 自社の価格を保証するものではありません。 営業利益率が低い業種では営業利益の倍率が大きく出るので、売上との比もあわせてご覧ください。
- 有限会社農産ベストパートナー・株式会社しん力8億円
- 株式会社ヤマタネドキュメントマネジメント(阪急阪神エステート・サービスのアーカイブ事業)・株式会社キョクトウ16億8,800万円
- 株式会社ショクカイ72億7,100万円(売上の0.42倍・営業利益の9.6倍)
自社だといくらになるかは、売却相場の考え方をご覧ください。
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本ページは株式会社ヤマタネが公表した適時開示をもとに編集部が整理したものです。 同社とは資本関係・提携関係はなく、掲載にあたって金銭のやり取りはありません。 内容に誤りがある場合はお問い合わせよりご連絡ください。最終更新:2026年10月12日